明かりのない部屋。
『──い、こ…は…─ンマ団の…──』
ノイズに混じって、切れ切れに音が届く。
「───んぁ?」
気だるげな声とともに紫煙が吐き出され、ソファから伸びた手がダイヤルを回した。
『──ンタローも……と…なったものだ』
スピーカ越しの声が、先程よりもクリアになる。
長い指が、細やかにダイヤルを左右させた。
やがて、欲しいトコロを見つけたように、ダイヤルを滑る指が止まった。
『──私が出よう。あの島へ上陸する』
はっきりと届いた声に、唇が満足気に歪められた。
「───へっ」
煙草を揉み消し、ゆっくりと起き上がる。
「──面白そーじゃねぇか…」
ぶつん、という音とともに、通信ボタンが切られた。
「さぁて……と」
もう一度、噛み殺すように笑うと、彼はドアの開閉ボタンに指を伸ばした。
MENU