照りつける日差し。
寄せる波音。
そして…──ぷすぷすと音を立てる、焼け付いた鉄の塊。
「──ゴホッ…」
大破したミサイルから、黒い物体が這い出した。
身体中に付着した煤を掃いながら、立ち上がる。
「着いたか」
呟くと、黒い物体─は、先ず周囲の状況を確認した。
敵の気配──無し。
怪我の程度──軽傷。
ミサイル──大破。
通信機───同じく、大破。
「予想の範囲内ではあったが」
やや忌々しげに吐き捨てて、半ば煤と化した元・通信機を投げ捨てる。
これで、飛空艦との連絡手段は途絶えた訳だ。
「…考えても仕方が無い」
当面、この状況下で生き延びねばならぬ現実は覆り様もない。
だとすれば、する事は一つ。
「先ずは地形の把握と、寝床の確保か」
この地に足を踏み入れた時点から、ここは己にとって戦場となったのだ。
が、森の方へと視線を向けたとき。
「ニャーン」
茂みから、猫の鳴き声がする。
「む…」
おもむろにポケットを探る。
程無く、一枚のジャーキーを引っ張り出す。
「チッチッチ…」
野良猫を手懐ける例の要領で、は茂みに近づいた。
がさり、と草を分けて出てきたのは…
「これは…」
「ニャー」
何とも立派な牙を持つ虎。
二本足で立ち、の持つジャーキーへと前足を伸ばす。
「む」
虎の顎を撫でながらジャーキーを与えていると、その腹に書かれた文字が目に入った。
達筆な字体で『猫』と書かれた、虎の腹。
「─東北ミヤギか」
は、記憶の中からその名を呼び起こした。
「と言う事は…」
─あ奴も居る、か。
ふと、の表情が和らいだ。
懐かしむように、青い空を仰ぐ。
熱帯気候に、青い空。
「アマゾンでの修練を思い出す」
呟いて。
ジャーキーを食べ終えた虎をもう一撫ですると、は表情を戻した。
切れ長の瞳がすうと細まり、薄い唇が真一文字に結ばれる。
「──任務、開始」
は、ミサイルの残骸に背を向け、海岸を後にした。
──It's time to perform the mission, ready!
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