【無粋な前置きby夢果実】
とある任務でチーム行動を取ることになった、レオンハルト・シュトラウスと“しのぎや”安良紀 一真。
単なる猫探しの依頼の筈が、気付けば修羅場に巻き込まれて───。
↑という前提の下にお読み下さい。それではどうぞ↓
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「君がどう考えているのかは知らんが、“災厄”前にはこういう格言がある。
『当たらなければ、どうという事はない』」
「そりゃそうでしょうけど!」
流石に、銃弾を銃弾で撃ち落とせる男は言う事が違う。一真は頭を抱えた。
「大体、猫探しで何でこんな怖い思いしなきゃいけないんですか!?」
「資本主義社会の縮図、という奴だ。一つ賢くなったと思えば気休めにはなるだろう?」
「なりませんよ!」
思わず大声で突っ込んでしまった。
途端に9mm弾のスコールが再び降り注ぎ、一真は違う意味で頭を抱えた。
70%近く破壊されたテーブルを捨てて、レオンハルトが盾にしているカウンターまで転がり込む。
「…何だか、本気で拙くないですかこれ?」
「ああ、拙いな」
レオンハルトも同意の頷きを返す。
「とてもではないが、修理代は支払い切れん。請求書はクライアント宛に送って貰うとしよう」
「後にして下さい!」
訂正──あんまり同意ではなかった。何処まで本気で何処から冗談なのか、かなり真剣に悩む一真だった。
そうこうする間に、包囲網は着々と完成されつつある。早くも投降を呼びかけるアナウンスまで聞こえてくるあたり、何かと有り得ない手回しの良さである。
「…これって、投降したらどうなるんですかね?」
「運が良ければ証拠不十分で釈放だが、難しいところだな。ああ、もっとも──君に関してはそれほどでもないが」
「どういう意味です?」
「どちらに転んでも、遅かれ早かれ手荷物込みで実家に強制送還だ。半年もすれば、4代目の“しのぎや”から中元だか歳暮だかが届くかも知れん」
「うげ」
嫌な未来予想図を嫌なリアリティで描写されて、一真は思わず呻いた。
「個人的には戦術的撤退を勧めるが、どうあっても流れ弾が怖くて堪らんと言うのであれば是非もない。手遅れになる前に、弁護士だけは呼んでおけ」
「…そんなお金無いですって」
身も蓋もない事をぼやきながら、一真は靴のストラップを強めに締め直した。走り出したら脱げました、では笑い事にもなりはしない。
その光景を横目に眺めつつ、レオンハルトは頷いた。
「では撤退だ。裏口の非常階段を降りたら、振り返らずに東へ真っ直ぐ走れ」
いつの間に抜いたのか、左手のコンバットマキシマムで調理場奥のドアを指し示す。
「何が出ようが一切付き合うな。障害はこちらで取り除く。質問は?」
「…被弾した時のアフターケアってあるんですか?」
「神父の真似事ならば引き受けるが、生憎仏式には心得が無いのでね。無理には勧めない事にしている」
「…全然嬉しくない」
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