それは、唐突過ぎる来訪だった。



「実はね…ぼく、マジックの弟なんだよ」
そう言った金髪の男は、芸術品のように綺麗な顔立ちをしていた。
「ということは、おまえシンタローのおじさんか!」
「そーだよ」
男はそう言うと、コートのポケットから一枚の写真を取り出した。
「ホラ」
「おお!」
(─シンタローさんだ)
そこには、サービスと名乗ったその男と、若い日のシンタロー、そしてマジックが写っていた。
シンタローが17歳のときの写真だという。
サービスはマジックの弟、シンタローの叔父。
ということは。

─この人も…

「サービスさん」
「何だい、お嬢さん?」
は意を決して、サービスに尋ねた。
「サービスさんも、シンタローさんを連れ戻しに来たんですか?」
サービスは、じっとを見、やがて薄い唇を開いた。
「─命令か、という意味ならノーだ。さっきも言ったように、ぼくはガンマ団ではないからね」
「っじゃあ……!」


そこに、トットリの下駄が落ち、同時に雷が降った。
聞きたかった言葉は、その直ぐ後、シンタローの口から形を変えて返ってくることとなる。







シンタローの声で、は意識を引き戻された。
「─…シンタローさん」
「───」
シンタローは、困ったような笑みを向け、何かを言いあぐねているようだった。




─パプワ─…俺、日本に帰るよ
『またいつか、きっと……』
『いつだ』


『いつかなんて日はいつだ』



その、やり取りは。
つい今しがたのことなのに、どこか遠い。
実感がないって、こういうことを言うのかな。
は、どこかぼんやりとした頭で思った。

──でも。
は、唇を軽く噛んだ。
痛覚は正常だ。

─全部、ホントのことなんだから─



ざり、と。
が、一歩踏み出した。
「─…
「シンタローさん」
シンタローより前に進み、そして振り返る。
逆光になった彼女の表情は、暗くて読めない。
「ご飯つくろう。パプワくん待ってる」
「─お、おう」
普段以上に、明るい声で。
にっこりと微笑んで、はパプワハウスへと歩き出した。


─無理にでも頬の筋肉を上げていないと、何かが零れ落ちそうだったから。








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