「うむ」
指差確認を終えると、は満足気に頷いた。
鬱蒼と茂るジャングルの中へ踏み入ると、潜伏場所は容易く見つかった。
先ずは寝床を確保。
次いで、環境を整える。
小一時間もあれば作業は終わった。
「さて」
太陽は丁度真上に在る。
思い起こせばここ数日、マトモな食事を摂っていない。
とりあえずと、ポケットから隊支給の携帯食を取り出す。
美味いものではないが、一応任務中だ。必要カロリーが摂れれば良い。
がレーションを一口、口に運ぼうとしたそのとき。
「きゃあああッ!?」
ガサガサガサ、という草を分ける音と共に響いた悲鳴。
「─かかったか」
はレーションをポケットへねじ込むと、悲鳴の方向へ向かった。
「な、なにコレ…??」
目に入ったのは、侵入者捕獲用ネットに包まれ、椰子の木の天辺付近にぶら下がる、一人の少女。
状況に戸惑いを隠せない様子から敵意は感じられないが、は一応の警戒を解かずに近づいた。
「──あっ」
少女がに気づき、若干の驚きを含んだ声を上げる。
「─何者だ。名を名乗れ」
静かに、は問うた。
「……、です。この島に住んでます…あの、貴方は?」
少女は素直にの問いに応じた。
南国には珍しい白い肌と、艶のある黒髪が印象的な少女だ。
無垢な瞳からは、今もって敵意は感じない。
─或いは、情報を引き出すか。
は懐からナイフを取り出し、一投で少女を囲う網を解いた。
重力に従って落ちてくる少女を、真下で受け止める。
「あ、ありがとうございます」
ぺこり、とお辞儀をする少女。
への警戒心はまるで感じられない。
罠を張った張本人だというのにお気楽なことだと、は内心で嘆息した。
「あの罠は、俺が張った」
「え?」
「して、礼を言う必要はない」
ぽかんと、呆気に取られた風の少女。
「ど…どうして?」
ちらり、とは少女を見下ろした。
─尋問は得手ではないのだがな。
一つ、溜め息をついたとき。
「おぉい、ー!?どこだ?」
にも聞き覚えのある声が、森に木霊した。
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