忍者の朝は早い。
森の中、しっかりと根を張った樹の上に、の寝床はある。
今日も今日とて、夜明けと共に起き上がり、先ずは周囲に変化がないかを確認。
「………?」
樹の天辺に立って島の全貌をぐるりと見渡していたは、いつもと違う光景を見止め目を凝らした。

広場の方で、ナマモノ達が何やら忙しなく動いている。
──と。

「ナカムラくん、はやくはやく」
「待ってよ、エグチくーん」
馴染みの二匹が、両手に何かを持ってのいる方へ走ってきた。
「む」
─バサッ。ガサガサガサ。

「う、うわー。何これー」
「誰か降ろしてよー」
の立つ樹の根元を通り過ぎようとした瞬間、二匹は何かを踏み、次の瞬間、見事に網に掛かっていた。


─特戦部隊隊員が一人、
背後より気配を感じると、口より先に瞬時にトラップを仕掛ける癖を持つ。

『オイ、!上司を罠に掛けるたァどういう了見だァ!!』
『─この場合、かかる方にも問題があるんじゃ…』
『何か言ったァ?ロッドちゃぁん』
『な、何も!何も言ってnぎゃああぁー!─いきなり眼魔砲はないッスよ、隊長ッ!』


部隊に居た頃も、飛空挺の中はおろか戦地でまで、ついつい仲間を精密なトラップに掛けてしまった失敗談は数え切れない。
半分の懐かしさと半分の忌々しさを孕む思い出に浸りつつ、はエグチとナカムラのトラップを瞬時に解いた。

「あ、くんだ」
「やーほー」
「お早う。怪我はないか」
「「だいじょーぶ!」」
自由になった二匹は、横並びにに挨拶をした。
暖かなものを感じつつ、それに応える
──と。
「あーーーっ!」
最初に声を上げたのはエグチだった。
見ると、彼らの両手一杯に持っていた花や葉っぱが、ぐしゃぐしゃになっている。
網にかかった際に潰れたのだろう。
「どうしよう、もう間に合わないよう!」
「む──済まぬ」
は身を屈め、何はともあれと事情を聞いた。
二匹は胸を張り、広場の方を指して言った。

「今日はパプワ島の運動会なんだよー」
「なんだよー」

ほう、とは声を上げた。
なるほど、広場の方が騒がしかった訳だ。
「だから、その準備をしてたんだけど…」
エグチが肩を落とす。
「飾りつけ用の花、どうしよう」
ナカムラも困ったように眉を下げた。

「ふむ」
が一つ頷いた。
「しばし待て」
言うが早いが、周囲から素材となりそうな花を摘み、適当な枝や葉で飾りつける。
エグチとナカムラがぽかんと見つめる間に、その量は彼らがはじめ持っていたのよりも沢山のものとなっていた。
「─これで代わりになるだろうか」
申し訳なさそうに、声を落として聞く
「うん!すごいやくん!」
「ありがとう!」
二匹はの細やかな手先から造り出された芸術品の数々を見て、大はしゃぎだ。
「あっナカムラくん!早く広場に持って行かないと!」
「そうだね、エグチくん」
思い出したように、慌てだす二匹。
「──そうだ!」
何かを思いついたように、エグチがに手を差し出した。

くんもおいでよ!」
「おいでよー」


が二匹の申し出を、光の速さで受け入れたことは言うまでもない。
こうして、パプワ島大運動会の幕が、上がろうとしていた。


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